リッカーミシンを倒産させたリクルート創業者・江副浩正の錬金術
リッカーミシンを倒産させた

リクルート創業者・江副浩正の錬金術
 前号で触れたが、東京地検特捜部が組織を挙げて「リクルート事件」に取り組む契機となった警視庁捜査四課による同社を巡る政官界人への贈賄事件捜査が突如打ち切りとなった昭和六十二年八月以降、警視庁捜査四課による捜査協力要請で、この空前絶後の贈収賄事件の輪郭を把握していた東京地検はその後、水面下で極秘裏に情報収集に動いていた形跡がある。これは単なる推測ではなく明確に根拠がある。
 当時、東京地検には犯罪被害者からの告訴や情報収集を受け付ける窓口に「直告係」があり、担当検事は、馬場良行賢司(=馬場義続・元検事総長の子息・故人)だった。その直告係の馬場検事に接触してリクルート社による政官界への贈賄の一部始終を伝えた週刊誌記者がいる。『週刊サンケイ』(その後廃刊)のI記者である。ちなみに、当時の『週刊サンケイ』編集長は、経営破綻し東京地検に摘発されたコスモ信組の広報部長を経て、後に武富士の広報部長に就任した人物だ。
 それはともかく、馬場検事に接触した『週刊サンケイ』のI記者は馬場検事との会話で東京地検特捜部が「極秘にリクルート情報の収集を行っている」事実を察知し、Iは手にしていたリクルート社の贈賄関係資料を「是非譲って欲しい」と馬場検事に懇請され、それを提供している事実がある。この一点でも、当時の東京地検は警視庁捜査四課による捜査の打ち切り後、この事件の摘発を目指し、水面下で極秘に情報収集に動いていた根拠になる。
 その際、前述のI貴社が東京地検に持ち込んだ「江副情報」の中に、ミシン製造のリッカー倒産劇」の舞台裏に関する情報があったことが特筆される。
 この時代にミシン製造の中心企業だったリッカーは銀座六丁目に本社ビルを構えていたが、平木証三会長の意向で同社は陸上競技の選手養成に熱心な企業として知られていた。陸上競技選手の養成に力を入れ過ぎた結果か、当時のリッカーの経営状態は思わしくなかった。
 この時期、昭和五十七年十一月に中曽根康弘政権が発足している。中曽根政権の政策的目玉は行革だ。その為に中曽根首相は東芝社長の土光敏夫を臨調会長に据え、電電公社、タバコの専売公社、国鉄の民営化に躍起だった。
 この中曽根政権による行革はレーガン米大統領の対日要請によって出発したものだ。レーガン政権末期のアメリカは四つの赤字に苦しんでいた。〆眄赤字、∨念彑峪、4覿叛峪、じ朕誉峪の四つの赤字で当時のレーガン大統領はアメリカ再生戦略として「ハイテクによる世界再支配戦略」を財政再建と世界再支配を目指す経済再生戦略の根幹に据えていた。
 この時期、アメリカのハイテク産業による世界再支配戦略を脅かしていたのが、公営企業・電電公社を中心とする日電(=NEC)、日立製作所、富士通等の「電電ファミリー」だった。リクルート事件で一躍注目されたクレイ・リサーチ社のコンピュータ。中曽根政権の要請でリクルート社が購入した軍事・科学技術計算用の超高速のスパコンだったが、実は「電電ファミリー」の一社である富士通は昭和五十七年の段階でクレイ社のコンピュータを遥かに上回る性能を持つコンピュータの開発に成功しており、仮に電電公社が国営企業である限り、日本の公企業は外国製品を買えない。要するに外国製品を買う為に、超黒字会社だった電電公社が民営化されたのだ。
 同時に民営化され、NTTとなった日本電信電話会社のトップに送り込まれたのが土光敏夫・臨調会長の側近だった石川島播磨工業の社長である真藤恒であり、真藤の初仕事は徹底した「電電ファミリー潰し」であり、結果、以後の日本はコンピュータや半導体等の開発で国際競争力を失って行く。
 経団連本部に突撃した新右翼の野村秋介氏らは経団連主導で日本の国益がアメリカに蹂躙される事を見越し、それを阻止すべく当時の土光敏夫経団連会長と直談判する目的で「盾の会」元隊員らと共に経団連を占拠する突撃行動を起した。その後の日本は新右翼の野村秋介氏が憂いた通りの日本になった。
 それはともかく、昭和五十七年に発足した中曽根康弘政権が「ロン・ヤス蜜月」を標榜して、レーガン政権の対日戦略を鵜呑みにする政策を具現化する事態を見越していた財界人が当時、少なくとも二人いた。一人はリクルートの江副浩正社長の師匠とされたウシオ電機の牛尾治朗社長と、東邦生命の太田清蔵社長の二人である。

 東邦生命の太田清蔵社長は、田中森一・元特捜検事が著してベストセラーとなった『反転』に登場する「イトマン事件」「石橋産業事件」の主役・許永中(=当時は藤田永中を名乗っていた)受刑者の育ての親だ。上京した許永中受刑者を株の仕手筋に乗っ取られつつあった山野愛子美容室が経営権を持っていた東証一部上場の「日本レース」の防衛策を行わせたからだ。結果、日本レースは優良物件だった京都・山科の時価二百億円もの土地等の含み資産を失い「鶏がらスープ」の様な会社になった。
 とまれ、東邦生命の太田清蔵社長はこの時期、中曽根行革によって電電公社と国鉄が必ず民営化されるだろう事を見越して、その労組員に生命保険を売り込む狙いで、ノンバンクである「東朋企画」を設立し、電電公社や国鉄幹部のOBを同社で多数天下りさせていた。これが元になって、東邦生命とNTT労組が核となって発足した情報労連の癒着が始まり、本紙(第五十七・八十四号既報)が告発した東邦生命による情報労連の年金資金を巡る巨額損失事件に発展する。
 そのノンバンクである「東朋企画」に経営危機に陥りつつあったリッカーが緊急融資の申し入れを行った。が、そのリッカーによる緊急融資の申し入れを断った「東朋企画」が代わりに紹介したのが、設立間もないリクルート社のノンバンクであるファーストファイナンスだった。
 緊急融資の申し入れに当ってリッカーは正確な決算書を同社に手渡している。当然の事だ。ところがその後、ファーストファイナンスのやったことは「錬金術師・江副浩正」の真骨頂を示す出来事であり、これがファーストファイナンスの初仕事だった。
 リッカーの経営危機が予想外に深刻である事実を同社の決算書で確認した江副浩正は融資を断る一方で、リッカー株を「空売り」したのだ。それだけではない。江副錬金術を端的に指摘した(株転がしと)土地転がしによる利益収奪の「スピード感に魅せられた」(『正義の罠』九十六頁)との指摘の通り、江副浩正はリッカーの粉飾決算を示す決算書類を銀座仲間の『内外タイムス』社幹部に手渡し、同紙で「リッカー経営破綻」のニュースを報じる様に依頼した。
 が、『内外タイムス』幹部も同じ銀座仲間のリッカーを潰す事には抵抗感があったらしく、その江副浩正から入手した決算書類を同紙の社外記者に手渡し、『内外タイムス』以外の媒体で記事を書くよう依頼した。
 ちなみに『会社四季報』(昭和五十九年夏季号)ではリッカーの経営状態は「多難」とあり、再建策として銀座六丁目の本社は「一部貸しビル転用」(同四六八頁)とあるが、『内外タイムス』の社外記者がリッカーの経営悪化を他の週刊誌で書いた為に、リッカーは「経営行き詰まり(が表面化)、会社更生法申請」(会社四季報)に至った。当然、ミシン製造の名門企業リッカーの株式は整理ポストに入れられ、最終的に同社株は一円になった。経営破綻する直前のリッカーの株価は三〇〇円弱。江副浩正がリッカー株を幾らでどの位、空売りしたかは不明だ。
 リッカーの決算書類を同紙の社外記者に手渡した『内外タイムス』のT記者は「ウチの幹部には江副と組み、リッカーの空売りで一億円も儲けたヤツがいる」と語っている点からすれば、リッカー株の空売りで江副浩正が儲けた金は相当巨額だったと推定される。
 これにより、陸上競技の優秀選手を多数輩出したスポーツの名門企業であるリッカーは消滅し、同社陸上競技部に所属していた多数の陸上競技選手は生活の糧を失う羽目に追い込まれた。
 スペイン・バルセロナ五輪の女子マラソンで銀メダルに輝いた有森裕子選手は「ウチの前社長のお陰で先輩陸上競技の選手が多数路頭に迷う羽目に陥った。スイマセン、スイマセン」と思ってマラソンコースを走ったかどうかは知る由もない。
 それにしても「リッカー倒産劇」に見る江副浩正の錬金術は明らかに企業家としても「ルール違反」だ。今なら正にインサイダー取引でアウトだ。この江副浩正の行為は当時の商法や証券取引法に抵触しないと言っても、融資を申し込んできた企業に対して融資を断るのは同義的に間違っていないが、その決算書を水面下で報道機関に手渡し、その会社の株を空売りする一方、その企業を経営破綻に追い込み、大儲けする等、「盗っ人猛々しい行為」という点で、明らかに「ルール違反」である。いや、犬畜生以下の卑劣で小汚い最低野郎だ。
 この「リッカー倒産問題」を巡る江副浩正の背信行為について、正義感に燃える吉永検事の心証を著しく害したであろう事は想像に難くない。また、この「江副錬金術」は、健全であるべき証券市場を弄んで「浮利」を得たという点で、「リクルートのDNA」の牋篥岨卅箸澳垢┸祐岫瓩里茲Δ淵薀ぅ屮疋△遼拗承文被告等、ベンチャー起業家に遺伝されて行く契機となったと言えなくもない。
 前置きが長くなったが、前述した東京地検による水面下でのリクルート社に対する情報収集活動は、この江副浩正による「リッカー倒産劇」を巡る舞台裏の情報は、東京地検の直告係・馬場良行検事に正確に伝えられていることは紛れもない事実だ。
 その結果、東京地検特捜部を指揮する吉永裕介・東京地検検事正が当時のリクルート社と江副浩正をどう理解したかは、推して知るべきである。
 これだけでも充分犯罪性は濃い。しかし江副の空売りの仕掛けはこんなものではなかった。昭和六十二年二月に全国八株式市場で一斉に株式を公開したNTTの株式に全国の主婦が飛びつき、大暴騰していたNTT株が一転、大暴落を始めた。このNTT株にも江副の「空売り謀略戦術」が潜んでいたのだ。
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