大物金融ブローカー風説流布事件
大物金融ブローカー風説流布事件

ジャパンメディアネットワーク

(JM−NET)

大盛工業株価操作の詐欺商売話

 2002年から3年前にかけて、携帯電話かけ放題をうたい文句に虚偽の新事業を公表し、東証二部上場下水道工事会社「大盛工業」の株価を不当に吊り上げた証券取引法違反―風説の流布容疑で、昨日(11日)午前、金融ブローカー大場武生容疑者を逮捕した。大場容疑者は公訴時効が12月18日に迫っていたが、都内のマンションに潜伏しているところを逮捕された。
 被害者は大盛工業株価操作に踊らされた一般投資家と、株価操作用の詐欺ネタ「携帯電話かけ放題」の装置となった会社ジャパンメディアネットワーク(以下、JM−NET)の下部代理店組織の人々だった。JM−NET即ち金融ブローカー大場武生の証券取引法違反(風説の流布)容疑は、単純な仕手筋の株券の高値売り抜けとは違う。代理店商法というえげつない商売でスタイル的には近未来通信の先達を行き、そして本紙でも報じているワールドオーシャンファームやジェスティオン・プリヴェ・ジャポン(GPJ)、最近のL&Gとも共通する至極悪質な詐欺商法である。(上層部代理店が儲けてイチ抜けというスタイルは昨日L&G+GPJ記事で報じた通り)

 詐欺師が使う常套手段―今まで投資した人の信用を失わさせずに如何に次の資金を出させるか―に奥義がある。

金融知能犯の顔ぶれ

 金融ブローカー大場武生容疑者は、過去にも1996年9月7日に「5億5000万円の預金流用事件(旧)三和銀前支店長らを特別背任容疑で逮捕」という事件で名を売った事件師である。三和銀行雪ヶ谷支店の前支店長が顧客の口座から多額の預金を流用した事件で、警視庁捜査二課に前支店長打越富雄、会社社長竹田幹夫容疑者、と共に商法の特別背任の疑いで逮捕された。その後「ホテル瑞鳳」詐欺事件でも逮捕(起訴猶予)されている。

 大場容疑者は大盛工業株取得のため、購入資金の出資者を募集。英領バージン諸島を本店所在地とする投資会社の「プライムコスモホールディング」などを使って、大盛工業株を取得し、高値で売り抜けた。このプライム社の代理人を務め、株の売買代金の振込窓口になっていた佐竹法律事務所は、大場容疑者が度々、同法律事務所に出入りしているのを目撃され、捜索対象となったが関与は否定している。「大場の法律面での指南役だった。ゼクー(2005年6月倒産)のことも色々と相談していた」と世間で噂された。

 大場容疑者はJMネットの親会社・大盛工業(東京)の売り抜けで約30億円の利益を得、強面の資金提供先への支払いに優先的に充て、大盛工業株へのほかの出資者に払う分はゼクー取引で一山当てようとしたのではないかと噂もされた。ところでゼクーに関して言うと、03年10月末時点で、5・6%の同社大株主だった原田漁業が市場で売り抜けた。結果、原田漁業が所有するゼクー株はゼロになった。この原田漁業とはMTCIに登場する原田漁業だった。このゼクーの第三者引受資金は、MTCI事件で一般投資家から集めた資金が絡んでいないかと疑惑が広まった。MTCI事件では50億円とも100億とも言われる資金の大半はいずことなく消えてしまっている。ゼクーの第三者割当先の原田漁業からの譲渡先の、キャピタルホールディング代表戸田幸雄)はJM−NET相談役で代理店(TTMコミュニケーション、以下TTMとする)元締めだった

 JM−NETの相談役でもあり、代理店のTTMコミュニケーション株式会社社長の戸田幸雄氏が資金元だとも言われたが、特筆すべきはJM−NETのメディア担当だと言われた大塚万吉(趙万吉)。大塚万吉は本紙にも縁あって取り上げたが、その後、大塚万吉はいち早く「武富士恐喝未遂容疑」で逮捕された男だ。

 何度も言うが、この大盛工業株価操作は、単なる仕手筋の風説流布容疑ではなく、商法に精通した金融知能犯グループによる一大詐欺事件と呼ぶべきなのだ。(商法、証取法に精通していてもITには詳しい奴はいなかったようだが…)

詐欺装置JM−NET

携帯電話かけ放題


 詐欺の装置であった法人、JM−NETは98年に設立させてからすぐ休眠会社となった。それが2002年に、いよいよ詐欺の舞台として登記し直された。代表は金融ブローカー大場武生の仲間、岩田誠一として。

 2002年に目覚めた休眠会社のJM−NETは、この年の11月、なぜか、大盛工業という東証二部上場企業の子会社、という形になった。東証二部上場で当時倒産の危機が噂されていた大盛工業が、11月30日に休眠会社から起したばかりのJM−NETが行う第三者割当増資を引き受け、持ち株比率が45.5%で事実上の子会社化したのだ。(2003年7月期末では、持ち株比率は81%に達した)

 同11月、JM−NETが「携帯電話かけ放題」システムを開発したとプレスリリース。

 販売代理店を募集し、メディアにひんぱんに出るようになった。「携帯電話かけ放題」を詳細不明のまま喧伝し始めた。代理店詐欺は当時それほど詐欺として認識されておらず、当時この「ジャパンメディアネットワークの携帯電話かけ放題!」は広告とバーター(交換条件)でハンパない数のメディアに取り上げられた。夢のビジネスとして。あの当時、日経新聞などにJM−NETの「広告」が掲載されていない日はハッキリいってなかったと言ってもいい位だ。(近未来通信の広告もそうだが)

 同じ頃、筆者は、単なる顔見知りで「知人」とも呼びたくない保険屋から「JM−NETという会社が画期的な商売を始めたんです、これは便利です」なんてしつこく営業の知らせが入っていた。仕組みはJM−NETのアダプターを26000円で購入し、IP携帯の基本料4500円(固定)を支払うだけ。それだけで、それ以上の通話料が発生しないとのこと。実際、当時も今も「本当のかけ放題」なんて夢の話で本当だったら利用したかった。その保険屋がバカだったからこちらは助かった。資金集めマルチ?と思ってJM−NETのサイトを見たら、当時でさえ「ちゃち」な作りのサイトだったので、「あーここがそんな技術できるわけないと思っていた。サイトはヘボくていい加減なくせに1期目から100億の収入を見込んでいると謳っていた。

◇携帯電話の料金定額システム
◇月々4500円+今使っている携帯電話の基本料金で24時間掛け放題
◇携帯は現在利用しているものでオーケー、番号も変わりません
 (おお、早くも番号ポータビリティ)
◇通話する相手(着信側)はアダプターをつけなくても良く、
◇アダプター初期費用に26000円・新規加入料2100円・登録設定料3150円・初回月額利用料4500円〜のみ!

2003年1月 大盛工業株、急騰

大盛工業のストックオプション


 2003年1月年始、
 債務超過で倒産寸前の大盛工業の株価が、30円→100円を越した。JM−NETへの出資を好材料に株価が奇跡のように急上昇。この行使により同社には大金が入り、債務超過を解消し倒産リスクがなくなった。1億8980万株のストックオプションが行使。ストックオプションとは経営者や従業員が自社株を一定価格で購入できる制度だが大盛工業のストックオプション価格は25円で購入可能だった。買ったとたん、110円になった。(もっともその後、2月中旬には56円まで急落―天井で売れた奴だけ大儲けだった)

 JM−NETの携帯かけ放題は「ユーザーの携帯電話を即時に『IP電話化』して、通話料金を定額にする」という信じがたい内容だった。筆者に最初にアプローチしてきたクルクルパーの保険屋は何一つ説明できなかったが、要は通常のPDC方式のコネクタ部にMobdeMという専用端末を挿すことで、通話をVoIPとして送信できるとのことだった。しかし技術上の根拠と詳細が全くなかった。PDC方式の通話が、小型の端末を介するだけでどうすればIPパケットとして伝送できるのかという説明もされなかった。

 また『定額制』の部分も理論がなかった。日本中、JM−NETだらけでJM−NET内で通話が完結する場合ならいざ知らず、他の携帯キャリア―docomo、au、当時のTU−KA(現ソフトバンク)とインフラを相互接続する場合、JM−NETがかけ放題でも、その事業者との間で接続料が必要なのだ。例え、ADSL事業者などが手がけるネットを介したIP電話サービスでも、NTTの電話回線、あるいは携帯キャリアとの間で接続料が発生するような通話は、当然ながら従量課金となる。電波に詳しくなくても理論、理屈でそう判明する。しかし、JM−NET側は、その辺、「逆に丸っきり無知」だから逆に強気になれたのか、「いや、IP電話だから定額制だし、他の電話料金も…なんか…無料みたいになるんだ!」と言ちんぷんかんぷんな広報を展開していた。

 そして2月、大盛工業からJM−NETと偽モルガンスタンレーを始めとする怪しい会社群に第三者割当増資

TBSに訴訟を偽装

 こうした状況下で、JM−NETを大きく揺るがす事件が起きた。
2003年3月17日TBSが「ニュースの森」「ニュース23」で、JM−NETの「IPモバイル電話で定額かけ放題」が実現不可能ではないかと疑問視する報道を行ったのだ。JM−NETの反応は早かった。ただちにニュースが事実に反している旨を自社サイト上で説明し4月15日付けで、TBSを相手どった訴訟を起こし「信用を著しく毀損された」として、1,100万円の損害賠償を請求した。ところが、10月に入ると、原告側は一転して請求を放棄する。これにより、判決の言い渡しを待たずして民事訴訟は終了となった。まぁ、これは取りあえず「代理店対策」として自分達が正当だと主張するためにTBSを訴えて、その訴えがマスコミを通じて代理店に届けば用事は済んだ事になる。それで終らず本気でテレビ局を怒らせて色々調べられたら計画が破綻すると考えたろうから、詐欺集団としては正しい選択、怒りの偽装だった。

 このTBS報道で、JM−NETは悪意ある報道とコメントを発表した。その反論コメントの中でJM−NET岩田誠一はうっかり「弊社は、高止まりする携帯料金をいかにして安くできるのかを、携帯電話のIP化をすることによって可能であることを、論理的にも実験的にも行ってきた」と延べた。画期的技術だと代理店を募集してきた癖に「実験云々」と言葉を自社ホームページに出してしまった。

2003年3月18ー19日
そんな中、JMNが名誉挽回のためモブデムの偽装デモ開催(直ぐにバッタ物と判明)

2003年3月24日
4月1日のはずだったモブデムサービスインを8/25に延期と表明

2003年7月
モブデムに代わってモブコム(PDA+PHS+無線LAN)とモブデムP(正体不明)を予告
密かに一部の代理店関係者にのみモブデムサービスを8/25からさらに延期と通達

「WIRELESS JAPAN 2003」への出展

 この訴訟が争われている間にもJM−NETは2003年7月に、デモンストレーションルームでの失敗に懲りずに「WIRELESS JAPAN 2003」というIT系イベントに出展した。よほどイベントコンパニオンなどが好きだったのだろうか。

 JM−NETは会場で大きなブースを確保し、大々的なデモを行った。ブースでJM−NETが売りにしたのは「モブコム」と呼ばれるpocket PCベースのPDAに独自のIP電話ソフトウェアを搭載した端末サービスだった。IEEE 802.11b準拠の無線LANと、PHSで通信を行う仕様で、通信方式はエリアに応じて切り替える、メルコの無線LANカードと、NTTドコモのPHSをバンドルする案が有力だが、詳細は未定という話だった。
 しかし「IPモバイル電話で定額かけ放題」の失敗は取り戻せなかった。このモブコムはIT素人のJM−NET経営陣には面白そうに思えても業界においては、技術的に新鮮味がなく、画期的なサービスではなかったPDAを利用してVoIP通話を行うもので、8月25日に商用サービスを開始する見込みだという(実現はされなかった)。一方、MobdeMの方はサービスの進捗状況として、相変わらず「携帯キャリア各社との交渉が難航している」という事で、これなら現・代理店になってしまった者の中にも、本気で胡散臭く思い始めた人達がいても不思議ではない。

2003年7月29日
大盛工業、JM-NETへ再び第三者割当増資

他社製品をパクって使用

 その後も、JM−NETをめぐりトラブル・疑惑続出で今度は上記にも記載したMTCIがらの流れを受けるJM−NET相談役戸田幸雄が代表を務めるTTMに絡んだトラブルが発生。

 2003年8月25日TTMが販売した携帯電話のアダプタに接続すれば割安通話が実現する端末「ホーダイクン(電話かけ放題のホーダイ君=ホーダイクン)」は、アペル社という会社が提供する自動ダイヤラ「アペルロム」と同一商品ではないかとの疑いが取りざたされた。あぺる社側が調査しTTMの販売した「ホーダイクン」がアペル社製品にペタンと「ホーダイクン」って貼っただけの物だっていうお粗末な話がバレてしまったのだった。そしてアペル社によって、この製品が、電話がかけ放題になるようなものではなく、単なる携帯電話の自動ダイヤルロムだということも発覚してしまった。この時も、JM−NETは対応早く、10月14日付けで、TTMとのOEM関係を合意解約している。

 その後も、JM−NETはメチャクチャにパクリ商品を製作する。前述のホーダイクンの次世代モデルとして、新たな専用アダプタも登場したが、それはフラップ社の「ぴっとデバイス」と同一製品だった。

2003年9月19日
大盛工業、10月中のJM-NETの売却とIP携帯電話開発事業からの撤退を発表
JM-NET、大盛工業によるJM-NET売却に伴いモブデム事業の一時中断発表

2003年10月28日
大盛工業、第37回定時株主総会

2003年10月31日
大盛工業、JM-NET株の日本IPモバイル販売(株)への譲渡を決定。譲渡価額2億円。

2003年11月末
TTMのホーダイクンがサービス停止に。TTMは事業から撤退した。JM-NETは「コールバックアダプタ版モブデム」の拡販を進め初期費用26,000円を集めまくる。通話量の増加に耐えられずコールバックサーバが接続障害を引き起こす。コールバック方式であるが故に、ひと月遅れで“使い放題"による莫大な額の通話料請求がJM-NETへ。破綻。

2003年12月26日
夕方頃からJM−NETより「不測のトラブルにより回線が不通の状態」→「一時的に通話頂けるよう緊急用サーバの設置準備」

2004年1月5日 モブデムは依然不通状態のままJM−NETより「緊急用サーバの設置準備」の案内が「1月8日頃を目途に通知予定」に延期

2004年1月19日
JM−NETオフィスに朝から人影無し

2004年1月20日
JM−NET、自己破産を申請し倒産。
負債20億円。突然の事態に右往左往する代理店。それでもまだ目が覚めない有力代理店の一部は、モブデムサービスを引き継ぐ企業探しに奔走。

2004年2月26日
フジテレビのスーパーニュースインタビューでJM−NET社長・岩田誠一「詐欺です」と認める

『話題づくりだけ』の点では

正に仕手筋による風説の流布


 メディア広報でさえ満足な説明が出来ないのにJM−NETは、社内にデモンストレーションルームを設置しイメージ作りを試みた。しかしこのデモルーム作戦も満足にデモを行える製品もなく、説明できるオペレーターさえいなかった為、自分の首を絞めはじめるきっかけとなった。

 JM−NETが、真に画期的な技術を開発していたのか、そして定額制・かけ放題のIPモバイル電話の提供を本当に目指していたのか。同社の関係者に連絡をとれなくなっては、確認できない。ただ、JM−NETの運営体制、莫大な広告費を使ってメディア操縦をした事は、さまざまな疑惑・憶測を生んだ。同社がそうした疑惑を払拭するだけの説明も、またユーザーを納得させるだけの実績も作れずに、事業を終わらせたことだけは間違いない事実だろう。

 最新テクノロジーなキーワードをちりばめて飾り立てる。説明は詳細にしなくてもよい。それで一般人は真偽がわからず騙される。そしてネットバブルが去ってもなお、「ネット業界には夢が埋まってる」という幻想が未だに、筆者もそうだが一般の人達の間に根強く残っている。そもそも、JM−NETの提唱した技術は今やほとんど実現している。この数年間で。ならばもっと新しい技術をもったベンチャーに今のうち、投資しておけば・・・。まだまだ、この手の詐欺(?風説の流布)は消えないだろう。
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