敬天新聞十月号・社主の独り言(甘口)
敬天新聞十月号・社主の独り言(甘口)

田中森一考



「反転」を読んで正直驚いた。いやよくここまで検察の裏側を暴いてくれたと感謝した。私も検察に騙された苦い経験があったからだ。しかもその騙した男が、この書に出てくる若き日の氏の親友であったというから、縁とは何とも面白い。
 ただ検察に国の機関として個人的な捜査権があるにせよ、あそこまでやっていいのか、というような手法やスタンドプレー的な行動も多く見受けられる。それをやり過ぎたからこそ「すご腕」と恐れられ、特捜のエースと呼ばれたのも事実だろう。
 組織としての検察が正しいのか、個々としての検察の判断が正しいのか、一長一短はあろう。「検察は悪を退治する正義の味方」と素直に思っていた人には疑惑を持たせ、裁判所や検察関係者には迷惑を及ぼす書かも知れない。いやその裏で拍手喝采している仲間達がいるのも事実だろう。しかし答えを出すのは大多数の読者である。
 ヤクザを突き放すことが出来なかった、ではなく、ヤクザの魅力、魔力というものに取り込まれていった、というのが正解で、反社会的な集団を更生させてやろう、という思いも一部の者(田中氏と触れ合った者)には可能でも、次から次から押し寄せてくる濁流の中に一人ぽつんと立ったところで押し流されるのが関の山である。
 氏の場合、検察時代、うるさ型で名が通り、犯罪者から恐れられた。その者が金があれば近づける人になった。誰でも偉い人や力のある人には近づきたい。だが近づける人は限られている。しかも金のある特定者しか近寄れなかったろう。金のある者は自分の用心棒に目に見える暴力から護ってくれる警備兵、体の健康を衛ってくれる医者、財産・法律方面を守ってくれる弁護士を持ちたいものである。
 それも一流の人は一流の人を好む。田中氏は財産・法律方面を守ってくれる人の中では過去が華やかだっただけに闇社会の一流者からは超一流に見えたのだろう。だが一般の人には全く興味はない。普段検察に縁もなかろうし、検察や警察に目をつけられるようなことはしない。万一、目をつけられたところで一流の人を顧う金もない。

 私が聞いていた田中森一氏の話は「許永中と組んで大儲けしているヤメ検悪徳弁護士」だった。書を読んで全く違う部分もあるし、やはりそう思われても仕方がない、と思う部分もある。ただ許永中と二人三脚で大儲けしていると世間から思われていた氏が、その割には許氏との記述の部分が意外と少なかったことには驚きである。
 しかし噂というものは如何にもあてにならないものである。私などただ悪党とつるんで銭儲けばかりしている弁護士と聞いていたから「ネタさえあったらいつか叩いてやろう」と思っていたくらいだ。こんなに実力があって、立派な過去があって、取り巻きが一流であることも知らなかった。これじゃ向かって行ったところで返り討ちにあうのがせいぜいだったろう。
 だが田中氏にも自惚れがあった。田中氏に助けを乞うて来たのは一流の闇商人である。一流だから儲けが大きい。しかもそこには違反性があるから、特捜が目をつけるわけである。それらを守ってやれば当然謝礼も太いのである。検察時代の手法に疑問を感じる部分もあるが、超悪を退治するには仕方がないか、と共感する人も多いだろう。
 だが弁護士になってからの彼に対しては本人が思っているより、悪者に悪知恵を貸してるだけじゃないか、と思っている人もまた多いことだろう。それは確かに庶民の妬み、やっかみも大いに含まれている。私が氏のことを知らないまま、聞いた世間の噂こそが、正にそのことを言い表していると思う。
 この書を読む限り、氏も許永中氏も問われている罪では無罪だろう。では何故、二人が逮捕され、実刑を言い渡されたのか。それは本人が気づいている通り目立ち過ぎたのだろう。許氏もそうである。噂では一〇〇〇億も二〇〇〇億も稼いだと言われている。その二人がタッグを組めば嫌でも目立つ。
 だが実際は一度もタッグは組んでいないという。しかも氏は自分の意識の中で一度も法は犯してないという。弁護士として最後の一線だけは超えないように努力してきたという。だが傍から見れば、充分一線を超えてるように見える。

 法は犯していないかも知れないが、倫理的には充分社会常識は超えている。法さえ犯さなければ何をしてもいいのか、これが一般的な氏への素直な意見ではなかろうか。それが判決の意味する答えである。
 私も自分では普通であり、正常者であると思っているが、世間はどうもそのようには見てないところがある。私の知り合いのヤクザ達もそうであるが、みな自分を普通の者と思っている。確かに二十四時間犯罪者でもないが、普通の人に比べて犯罪を恐れないところはある。そういう者達と付き合えば知らず知らずに染まるところもあるし、感覚が麻痺してくるところもあるのだ。
 氏の中に確実に麻痺した分もあったろう。金の身入り部分や使い方の異常さは驚愕である。それに闇商人達の善の部分というか、正の部分だけの付き合いだから、浪花節調で語られているが、実際は彼らがどれだけの人を泣かして(犠牲にして)生きてきたか分からない。
 この書に登場してくる人物は金銭的な成功者である。その成功者が困った時に頼ったのが元特捜のエースだったという氏である。成功者達は氏に頭を下げた。氏は彼等に、その実力もあって上から物の言える立場で付き合いが出来た。だから彼らのよい部分だけしか見えなかったのではないか。だからこそ反社会的な集団を更生させよう、自分なら出来る、と錯覚したのだろう。
 感性は極めて私も似ている。大物と言われる人も、それを狙う人、また守る人も、みんな考えてることは然程変わらないことを改めて確認した。
 縁とは不思議なもので、氏の大学時代の同級で一緒に遊び回った柔道部の親友で同じように検察になった神垣清水(最高検総務部長)氏こそ私を騙して起訴した人間である。この書を読んで検察はやはり被疑者を落とす為に嘘も言えば、作為的な言動をすることが改めて分かった。

 私も裁判官に「騙された」と何度も訴えたが、氏の言う通り後の祭りだった。不思議なもので、その時は神垣氏を恨んだが、今ではいい経験をさせて貰ったと笑って話が出来る。一つには私の懲役経験が、他人に笑われるような罪名ではなかったということに尽きよう。
 三十年前、空調設備屋の最大手高砂熱学を恐喝未遂したという罪で逮捕されたのだが、私はその時、八〇〇万を恐喝していた。しかしその八〇〇万を恐喝した罪は問わずに、恐喝未遂で問うという、矛盾した罪で私を逮捕してきた。だから私は「起訴できるわけがない」とタカをくくったのである。私を逮捕した所轄の神田暑は事実通りの調書しか取れなかった。そこで神垣氏が一計を案じて私を煽てて乗せてきた。それに私が引っかかったのである。
 今程経験があれば何でもないことだった。八〇〇万円恐喝するにはそれなりの理由があった。いやこの金が恐喝ではなく、高砂が私に支払わなければならない金だということを警察は分かっていた。だから金を取ったことでは罪を問えずに、金を取る過程での行為を問うことにした。その途中の行為を恐喝未遂としたのだった。
 恐らく田中森一氏も被告の身になって始めて、弱者の気持ちが分かるようになったのではなかろうか。いや元々は弱者だった。その弱者から這い上がって、バブルの波に乗って、いつの間にか永久の強者と錯覚してしまった。今多くの裏切り、薄情、溺れる身に石を投げつけられて、目が覚めたのかも知れない。

 だがこの期に及んで許永中氏に対する信じて疑わない契りには惚れ惚れする程の男の匂いが溢れる。やはり男として信頼するに足りる何かを持っている人なのだろう。ここまで検察の裏側を暴けば今後の風当たりは相当強かろうが、必ずもう一度花を咲かすのではなかろうか。
 今はこれから過ごす三年間の刑務所生活のことを心配してるようだが、先輩として一言助言するなら二審の判決は事実誤認がない限り先ず引っ繰り返ることはない。務める時の辛さは残した家族の経済的な負担と問われた罪名による。
 貴方の場合、残された家族の経済的なものは心配なさそうだし、罪名も詐欺ではあっても、貴方自身、神に誓ってもそのような行為はない、という自信を持っているわけだから、恥じることはないだろう。 ただ「刑務所に行った弁護士」という立場になることによって過去の栄光が消えてしまうことは否定できない。だが人生というのは生れた時から死ぬまで栄光を持ち続ける人はそうはいない。
 もう充分、成功したわけだから残りの人生は帰ってきてからゆっくり生きてもいいんじゃないですか。今度こそ貴方の正義漢を弱者に生かしてみてはどうだろうか。同郷の先輩でもあるし、ぜひ一度お目にかかってみたい。
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